コラム : スギ花粉症の低年齢化

アレルギー疾患 花粉症 かゆみ

現在、我が国では5人に1人がスギ花粉症といわれています。実際の有病率は2割よりはるかに多いという説もあります。スギ花粉症はまさに国民病といえるでしょう。とくにスギ花粉症患者のうちおよそ8割の方がはヒノキの花粉にも反応するといわれており、スギ・ヒノキ花粉症と呼んだほうがよいという指摘もあります。今回は花粉症(アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎)のお話です。 スギ花粉症の低年齢化が進んでいると聞いて驚かれる方もいるのではないでしょうか。1980年代の調査では、“4歳以下のスギ感作例はほとんどない”と報告されていたのです。ところが増田佐和子医師による報告(※)では、アレルギー疾患がない小児でも4~5歳で20%が血液検査(RAST)でスギ陽性であったそうです。これは現在無症状であっても将来の花粉症予備軍が形成されていることを意味しています。何らかのアレルギー疾患(アトピー、喘息など)を持っている幼児においては、年齢が上になるほど徐々に血液検査陽性率が増加し5歳では80%近くに達していたそうです。

国立成育医療センターが2005年に全国の小中学生約13万人を対象に実施したアレルギー疾患調査によりますと、小学生の17%、中学生の38%が花粉症を発症しているという結果が出ており、花粉症の低年齢化が進んでいることが示唆されています。

花粉症の症状は、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみ、です。このうちのどれが強いかによって治療が変わってくることをご存知でしょうか?2005年版の鼻アレルギー診療ガイドラインに詳しく示されています。花粉症の治療については稿を改めて書きたいと思います。

幼児の花粉症では、上記の大人にも見られる典型的な症状に加えて、目や鼻をこする、顔をしかめる、咳、いびきなど多彩な表現形をとるので、親が花粉症と気づいていない場合があります。鼻血が主訴で受診した幼児を検査をしてみると花粉症で、鼻のこすりすぎによる鼻出血であったという報告もあります。春先のアトピー性皮膚炎の増悪例の中にもスギ花粉の影響が考えられるケースがあるのです。近年、小児領域においてもRAST検査でスギをはじめとする種々の花粉について調べる意味が大きくなってきているといえるでしょう。

※増田佐和子、小児科臨床、59(12):2657-2662,2006

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