コラム : 患者さんのニーズにこたえる皮膚科診療

医療 梅田皮膚科

米国において、1980年代から言われ始めた顧客満足度(CS:Customer Satisfaction)が最近我が国のサービス業においても重要視されるようになってきています。1995年の厚生白書において、医療はサービス業であると明記されていますが、医療界においてはCSに対する考え方が他の業種と比べて大幅に遅れているという(患者さんのニーズが優先されているとは言えない)現状があります。

2004年3月「東京発医療改革」の一環として東京都が行ったアンケートによりますと、医療機関への不満の内容(重複回答)は

第1位 待ち時間が長い 86.0%
第2位 どの医療機関がよいかわからない 66.7%

となっています。今回のコラムはこのことを題材にして書きたいと思います。

「待ち時間が長い」

どこの医療機関でも言われている不満のように思います。医療の質が高ければ高いほど患者さんが集まるのは必然の流れと言えるでしょう。私は根本的な解決策は、診察曜日や診察時間の枠を増やすこと以外にないと考えています。このことに関してはコラム「 週7日制への挑戦~日曜診療をする理由 」に書きましたのでお読み頂ければ幸いです。

「どの医療機関がよいかわからない」

勤務医時代の話です。私が勤務してきた病院はすべて、幸いにも、規模も大きくその地域ではブランド病院とされている医療機関でした。初診の患者さんに「どうして当院を選ばれたのですか?」と尋ねると「大きい病院に行くようにと周りから勧められて」という答えが一番多かったように思います。この言葉には大きな2つのポイントが隠されています。一つは「大病院信仰」、一つは「周りの人の口コミに頼るしかない情報不足」です。コラム「なぜ病院の担当医が次々に変わるのか?」でも詳しく述べましたが、病院のネームバリューで漠然と医療機関を選ぶのではなく、診療を行う医師一人一人の情報が開示された上でその情報をもとに患者さんが医師を選ぶという方法が、医療問題が混迷をきわめる今の世の中では正しい選択となるのではないでしょうか?

患者さんから言われた言葉でとても印象に残っているものがあります。ある患者さん(以下Aさんとします)が多数の医療機関を受診しても診断がつかず、治療にも入れないというケースがありました。そのAさんが私の外来を偶然受診し、私が診断を行い治療を開始し、幸いAさんの症状は改善しました。Aさんはとても喜んでくださったのですが、そのAさんが目に涙をためて強い口調でこう言ったのです。

「私は先生に偶然出会えてとても感謝しています。でも先生はこの病気の方は他にも結構おられると言われましたよね。私は先生と出会えるまでの期間が本当に辛かった。私のほかにもいい先生に出会えず苦しんでいる人がまだいると思います。先生はいい診断、いい治療をしてくださいますが、どうして先生自ら情報を発信されないんですか?先生が情報を発信してくれていたら私のようにどこの医療機関がいいのかわからなくて途方にくれる患者が少しでも早く先生に出会えると思うんです。」

Aさんの言葉がきっかけとなって、以来、私は病院ウェブサイトで私の診療内容を積極的に発信するようになり、診察室ではあらかじめ作った配布用プリント資料を用いて患者さんに説明を行うスタイルを取り入れました。また医学界での発表や論文だけではなく、一般の方向けの講演会や原稿の依頼も積極的に受けるようになったのです。その結果、最後の勤務病院となった大阪労災病院では、私の初診患者さんの半分以上が私を指名で訪ねてきてくださるようになりました。大阪労災病院のネームバリューではなく、私自身の情報発信や今までの私の患者さんからの口コミで受診してくださったのです。

2007年3月29日、大阪労災病院大ホールにて平成18年度大阪労災病院医学文化教室「アトピー性皮膚炎 ~ステロイドの功罪~」という講演を行いました。講演の最後に締めくくりとして「大阪の皮膚科再起動宣言」と題して患者さんのニーズにこたえる皮膚科診療として3つのマニフェストを掲げました。

2006年7月の大阪労災病院着任当時、私の外来診察枠は火曜と金曜の午前のみでしたが、直ちに増設に着手し、段階的に増やして最終的には午前と午後を合わせると月曜から金曜まで週5日制にまでなりました。退職直前にはそれでも外来診察枠が足りなくなり診察枠外でも外来診療を行っていました。2007年8月1日の梅田皮膚科開院にあたり、さらに診察枠を増設し、週7日制を実現することができました。

勤務医時代からのウェブサイト上での情報発信も梅田皮膚科開業に伴ってさらにパワーアップしてまいります。診察室(クリニック)での資料配布もこれまで同様に行ってまいります。

診断名は同じでも、患者さんによって症状、重症度、生活背景は異なります。梅田皮膚科では患者さんの一人一人に合わせたオーダーメイドの診療を行ってまいります。

梅田皮膚科は患者さんのニーズにこたえる皮膚科診療の実現をめざします。