コラム : じんましんにもいろいろあります

アレルギー疾患 皮膚科疾患 かゆみ

じんましん=食べ物が原因、と考えられる方が多いと思います。しかし、食物が原因ででる蕁麻疹(食餌性蕁麻疹)の比率は意外に低いことをご存じでしょうか?今回のコラムは、皆さんが一度は経験したことがあるかもしれない蕁麻疹についてです。

まず、皆さんが「じんましん」かどうかを見分けるポイントを説明します。一つめは、蚊にかまれたような皮膚面の盛り上がりが生じる(膨疹といいます)ということ、二つめはその皮疹が数時間であとかたもなく消えてしまうということです。 次々と別の部位に出てくる場合が多いので、ある1か所がどのくらいで消えるかを観察することが診断の助けになります。診察室では皮疹がすべて消退してしまっていることも少なくありませんが、最近ではスマホで皮疹が出ているときの写真を撮って見せてくださる患者さんがいてとても助かります。しかし、蕁麻疹は診察時に皮疹が出ていなくても患者さんからしっかり問診を行うことによって、診断、治療が可能な疾患ですので、遠慮なさらずに皮膚科専門医を受診するようにしてください。

2005年に発表された蕁麻疹・血管性浮腫の治療ガイドラインでは、蕁麻疹の主たる病型は次の3つに大別されています。

  1. 特発性の蕁麻疹
  2. 特定刺激ないし負荷により皮疹を誘発することができる蕁麻疹
  3. 特殊な蕁麻疹または蕁麻疹類似疾患

です。

(1)の特発性の意味をわかりやすくいえば原因不明ということです。実はこの特発性の蕁麻疹がもっとも多いといわれています。もちろん、感染、食物、疲労、特定の薬剤が誘因になることもあるのですが、再現性(特定刺激ないし負荷により皮疹の誘発が可能)がないとやはり特発性となるのです。

(2)はいわゆる原因がはっきりしている蕁麻疹ですが、食物、薬剤、環境物質、感染性微生物などによる蕁麻疹をはじめとして、擦過の刺激によるもの、寒冷や温熱によるもの、日光によるもの、水との接触によるもの、発汗刺激によるコリン性蕁麻疹などさまざまな蕁麻疹があります。特定の食物(小麦、エビなど)を摂取後に運動刺激が加わってはじめて蕁麻疹症状が出る食物依存性運動誘発アナフィラキシーという疾患もあります。

(3)には血管性浮腫(※)や蕁麻疹様血管炎という病気が含まれます。

蕁麻疹の治療の原則は抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤になりますが、この基本治療でよくならない治療抵抗性蕁麻疹も存在します。蕁麻疹に対する副腎皮質ステロイド内服薬の処方は、あらゆる手を尽くしても効果がなく、かつ日常生活に障害をきたす、すなわち治療抵抗性で重症の蕁麻疹に対する最終手段であると私は考えています。

1か月以上症状が続く蕁麻疹を慢性蕁麻疹と呼びますが、長期(数年)にわたり副腎皮質ステロイド内服療法を他医で受けておられる慢性蕁麻疹の患者さんが来院されるということがしばしばあります。私はステロイド以外の治療を加えることによってステロイドの減量・中止を目指して治療を開始します。ステロイドを飲んでいるときよりずっとよくなりましたという患者さんの笑顔が日々の診療の原動力となっています。

また、慢性蕁麻疹にはアスピリン不耐症が原因となっているものもあるので注意が必要です。 アスピリン不耐症 のコラムも御参照ください。

蕁麻疹でお悩みの方はは皮膚科専門医のもとで正確な診断、適切な治療を受けられることをおすすめします。

※血管性浮腫:蕁麻疹は真皮上層の浮腫ですが血管性浮腫(クインケ浮腫)は真皮深層から皮下組織にかけての浮腫です。口唇や眼瞼(まぶた)が腫れるという症状を呈します。