皮膚のできものには2種類あります。皮膚良性腫瘍と皮膚悪性腫瘍です。習熟した皮膚科専門医なら視診だけでかなりの高率でこの2種類を見分けることができます。皮膚科医に見せて頂くだけで大変意味のあることなのです。気になる方は遠慮なさらずに皮膚科を受診しましょう。
人間の皮膚には加齢にしたがって良性腫瘍がどんどん増えていきます。これをすべて切除して検査していたらキリがありません。しかし、病理組織診断によらなければ確定診断できないケースが確かに存在します。
まず、皮膚良性腫瘍の中でとても頻度の高いものを2つ紹介します。
粉瘤は別名アテロームとも呼ばれる良性腫瘍です。皮膚の下に袋のかたちをした膜のようなものができ、その中に垢(角質)などがたまる腫瘍の総称です。できものの中央辺りに臍のようなくぼみがはっきり見えることがありそこから内容物が少し出てきて臭うという場合もあります。ときに二次的な細菌感染を起こし(感染性粉瘤)、大きく腫らして初めて医療機関を訪れるケースが少なくありません。
脂漏性角化症は、中年以降に発生し、加齢とともに増える皮膚の良性腫瘍で、皮膚の老化現象のひとつとされており、老人性疣贅とも呼ばれます。黒褐色を呈し軽く隆起して皮膚にぴったり貼りついたようにみえるできものです。良性なので治療の必要はないのですが、この脂漏性角化症が短期間で急速に多発ししばしばかゆみを伴う場合があります。この現象はレーザトレラ徴候と呼ばれ胃癌などの内臓悪性腫瘍を伴う場合があり注意が必要です。
次に、皮膚悪性腫瘍ですが、日光角化症、ボーエン病、基底細胞癌、有棘細胞癌、悪性黒色腫(メラノーマ)、ページェット病、菌状息肉症などが主だった疾患です。
この中でいわゆる「ほくろのがん」である悪性黒色腫は、最も悪性度が高く、進行も速いため、治療が手遅れになるとほとんど生命にかかわってくる恐ろしい疾患です。いびつな形、境界不明瞭、色調不均一、長径6mm以上、病変部の隆起、が視診上の典型的な特徴といわれています。
取り返しのつかない状態になる前の早期診断、早期治療が肝心です。なかなか治らない皮膚病変、月単位で急速に大きくなってきたできものがある方は、皮膚科専門医のもとで皮膚がん検診を受けることをおすすめします。