アメリカの医療ドラマ「ER」のシーズンⅣでカーターが指導担当する医学生ジョージ・ヘンリーが患者の治療中にゴム手袋を手につけたまま突然ショック症状になり患者の横で気を失って倒れ、気管内挿管を受けるという印象的なシーンがありました。カーターはヘンリーの手袋を剥ぎ取り真っ赤に腫れた両手を見てラテックスアレルギーの診断を下したのです。ラテックスアレルギーというと私はいつもこの場面を思い出します。
天然ゴム製品に接触することによって起こる蕁麻疹(じんましん)、 アナフィラキシーショック 、喘息症状などの即時型アレルギー反応(接触から15分以内に起こる)をラテックスアレルギーと呼びます。ゴム手袋に手がかぶれる(湿疹ができる)症状は遅発型アレルギー反応により起こっているので接触皮膚炎の中に含まれますので、このラテックスアレルギーとは異なる病気です。
天然ゴムは、医療用手袋をはじめとした医療用具、家庭用ゴム手袋、ゴム風船、コンドームなど、日頃から接触する機会が非常に多いといえます。中でも手袋装着頻度の高い歯科医師や手術室勤務者にラテックスアレルギーの頻度が高いといわれています。しかし、医療従事者以外にもラテックスアレルギーのハイリスクグループが報告されています。意外なことに、果物の食物アレルギー(口腔アレルギー症候群
:OAS)の患者さんにラテックスアレルギーの頻度が高いのです。これはラテックスアレルゲンと交差抗原性を持つ果物によって引き起こされる現象でラテックス-フルーツ症候群と呼ばれています。
ラテックス-フルーツ症候群を引き起こしやすい食物として、バナナ、アボガド、キウイ、クリ、メロン、トマト、ジャガイモなどがありますが、このほかにもラテックスとの交差性を示す食物は種々報告されています。
アトピー素因はラテックスアレルギーの危険因子であり、かつ花粉症が関与するOASの危険因子でもあるといわれており注意が必要です。
診断には専門医による詳細な問診のほか、血液検査(RAST)やプリックテストが有用です。
文献:大砂博之、河野真純、池澤善郎、Latex-fruits syndrome,アレルギー・免疫vol.8,no.8,894-899,2001
梅田二郎、片岡葉子、アレルギー検査法Ⅱ,皮膚病診療,28(増),55-60,2006