「ヘルペス」という皮膚病があることを御存知の方は多いのですが、一般的にヘルペスと呼ばれる病気には2種類あるということは案外知らない方が多いようです。(医学的には人間に感染するヘルペスウイルスは8種類が知られています。)今回は2種類の代表的なヘルペス、「単純疱疹」「帯状疱疹」についてのお話です。
よく知られている口唇ヘルペスや性器ヘルペスは、この単純疱疹に含まれます。もちろん、口唇や性器以外にも単純疱疹は発症します。例えば、口腔内(ヘルペス性口内炎)、手の指先(ヘルペス性ひょうそ)、おしり(臀部ヘルペス)などがあります。
単純疱疹は単純ヘルペスウイルスの感染によって起こる病気です。このウイルスは感染力が強く、直接接触の他にウイルスが付着したタオルやグラスなどを介しても感染します。このため、親子や夫婦など親密な間柄で感染することが多い病気です。このウイルスの特徴は初感染のあと抗体ができても、風邪で体調が悪いときなどに再発や再感染を繰り返すというところです。このため「熱の華」や「風邪の華」の別名があります。
症状の特徴は、皮膚にムズムズ、ピリピリといった違和感、かゆみを感じますが、後述の帯状疱疹と違って痛みはほとんど感じないことです。赤くはれたあと小さな水ぶくれ(水疱)ができ、その後かさぶたになります。とびひ(伝染性膿痂疹)との鑑別が難しいため、皮膚科専門医を受診されることをおすすめします。
治療は抗ウイルス剤の外用、内服になります。2006年9月には、性器ヘルペスを年に6回以上再発を繰り返している患者さんに対して、再発抑制療法が保険適応となりました。慢性的にヘルペスに悩まされていた患者さんにとっては大きな福音といえるでしょう。
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帯状疱疹は、水ぼうそうと同じウイルス(水痘・帯状疱疹ウイルス)によって起こる病気です。ほとんどの人が子どものときに水ぼうそうにかかりますが、このウイルスは、水ぼうそうが治っても神経節の中に潜んでいます。その後、数十年経ってから、ウイルスが再び活性化して、帯状疱疹として発症します。
皮疹の出現前に電気が走るような神経痛が発作的におこることが多いのが特徴です。顔や胸、背中、おなかなどに、赤い腫れ、水疱が集まったものが帯状に現れるため、「胴巻き」という俗称があります。左右どちらか、体の片側に皮疹が出るのも帯状疱疹の特徴です。
治療は抗ウイルス剤の内服が第一選択になります。重症の場合は入院での抗ウイルス剤点滴が適切になるケースもあります。皮膚症状は2~3週でなおっていきますが、痛みは長期間続くことがあり、ペインクリニックへの紹介が必要になることもあります。
単純疱疹と違って一度できた抗体は長期間(数十年)ウイルスを抑えこむので、帯状疱疹が人から人にうつることはないのですが、水ぼうそうにかかったことのない子どもや、免疫状態の下がった人にはうつることがあるので注意が必要です。単純疱疹と違って、普通は一度帯状疱疹になると再発はしません。しかし免疫が低下した状態では再発するケースもあります。