接触皮膚炎は「かぶれ」とも呼ばれ、皮膚に直接付着した抗原(アレルゲン)によって炎症が起こることにより発症するアレルギー疾患です。一度接触皮膚炎を起こした原因物質にはその後もアレルギー反応が続くため、原因を除去し続ける必要があります。
接触皮膚炎の原因物質には、植物、金属、化粧品など様々なものがあります。消毒薬や家庭薬、医療機関で処方されたぬり薬が原因物質となる場合もありますので注意が必要です。また光線(日光)の関与があって初めて発症する接触皮膚炎もあります。
【例1】植物が原因物質となる接触皮膚炎の一つにウルシ皮膚炎があります。ウルシ、ツタウルシ、ヤマハゼ、ハゼノキなどの植物に直接接触することにより発症しますが、ウルシとツタウルシは近づくだけでかぶれる場合があるので注意が必要です。ウルシ皮膚炎のアレルゲンはウルシオールと呼ばれる物質ですが、酸化されて硬化した樹脂には感作能がないため、完全に乾燥したウルシ塗り製品ではかぶれないとされています。
ところで、ウルシ皮膚炎の患者さんが、ギンナンやマンゴー、カシューナッツでも症状が出ることがあるというと驚かれる方が少なくないと思います(口腔アレルギー症候群
)。マンゴー、カシューナッツ、ピスタチオはウルシ科の植物なのです。ギンナンがなるイチョウはウルシ科ではありませんが、ウルシと交叉反応を起こすことが知られています。
【例2】医療機関で処方される頻度の高い経皮鎮痛消炎剤にケトプロフェンがあります。湿布、ゲル、ローション、クリームなどの剤形があるこのケトプロフェンには接触皮膚炎だけでなく光線過敏の副作用が出ることがあるのですが、貼り薬や塗り薬で光線過敏という発想が一般の方にはないことが多く、診察室で説明すると驚かれる方が少なくありません。
ケトプロフェン貼付(塗布)部を紫外線に曝露することにより、その部位に強いかゆみを伴う紅斑、発疹、刺激感、腫脹などの皮膚炎症状が出てくる場合があります。まれではありますがさらに全身に皮膚炎症状が拡大してくる場合もあります。
ケトプロフェン使用中は天候にかかわらず、戸外の活動を避けるとともに、日常の外出時も、貼付(塗布)部を衣服、サポーターなどで遮光する必要があります。なお、白い生地や薄手の服は紫外線を透過するおそれがあるので、紫外線を透過させにくい色物の衣服を着用しましょう。また、使用後数日から数か月を経過した後で光線過敏が出現することもあるので、使用後も当分の間,同様の注意が必要です。
皮膚科専門医の認定を受けるためには接触皮膚炎についての深く広い知識が必要とされます。単なる「かぶれ」とあなどることなかれ。接触皮膚炎は、皮膚科専門医のもとで診断、治療、生活指導を受けることが肝要です。