ホームコラム : 時代は変わる~ニキビ治療の新しい波

皮膚科疾患

jpg 40642 byte 2008年10月21日は日本のニキビ治療(尋常性ざ瘡治療)が大きく変わる日となりました。厚生労働省がアダパレンというレチノイド様作用を有する外用薬(ぬりぐすり)の保険適応を認め、医療機関での保険診療による処方が開始されたのです。このアダパレンは1992年にフランスで承認されて以来その高い効果が認められ世界80か国以上で承認され、尋常性ざ瘡治療の第一選択薬剤として、世界で最も処方されている外用にきび治療薬なのです。日本のニキビ治療が欧米のレベルから立ち遅れていることを象徴するようなおくすりであったと言えるでしょう。

このアダパレンはこれまでの日本でのニキビ治療の主力であった抗菌薬(抗生物質:ニキビ菌を減少させ炎症をしずめます)とは作用点が異なります。レチノイド様作用による表皮角化細胞の分化抑制がおこり、毛穴のつまりを取り除くはたらきを持っています。ですので赤ニキビ(炎症性のざ瘡)に対しては、抗菌薬とアダパレンを組み合わせた治療によってより高い効果が期待できるのです。

これまで我が国では、白ニキビや黒ニキビ(面皰:非炎症性のざ瘡)に対して有効な保険適応のある治療がほとんどないという状況でした。アダパレンは「毛穴のつまりを取り除く」はたらきによって面皰(めんぽう)の改善に効果が高いことが証明されています。

2008年9月に日本皮膚科学会誌上で発表された「尋常性ざ瘡治療ガイドライン」において、アダパレンはほとんどすべての種類のニキビ(赤ニキビ、白ニキビ、黒ニキビ)治療において高い効果が認められ、推奨度A(行うよう強く推奨する)にランクされました。(残念ながらにきびあとに効果があるというエビデンス(臨床的な裏付け、根拠)はありません)

さて、アダパレンのメリットばかりを述べてきたわけですが、デメリットも十分に理解する必要があります。

まず、妊娠している方、妊娠している可能性のある方、授乳中の方はアダパレンを使用することはできません。

またかなり高い確率であらわれる副作用があります。それは、皮膚の乾燥、不快感(ヒリヒリ感)、落屑(皮膚が細かくはがれる)、紅斑(赤くなる)、そう痒感(かゆみ)です。これらの皮膚におこる副作用は通常軽度で、ほとんど使いはじめから2週間以内にあらわれ、その後やわらいでくるといわれています。ですので、治療途中で中止しないといけないケースは少ないのですが、個人差があるので、アダパレンに精通した皮膚科医のもとで保湿剤の併用なども相談しつつ治療を行っていくことが重要です。

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